一応隠し要素などのネタバレが含まれているためご注意ください。
まえがき
2022年4月7日にNintendo Switchで発売したTHE HOUSE OF THE DEAD REMAKE(ザハウスオブザデッドリメイク)。
全世界のハウスオブザデッドファンのみならず、ガンシューファンにとっても待ち望んでいたリメイクだったのではないかと思う(誇張)。
今作は1997年に発売されたアーケード版ガンシュー「THE HOUSE OF THE DEAD」初代のリメイクである。
ジャンルとしてはガンシューティング・レールシューティングと呼ばれるもので、
プレイヤーは自動で視点移動する中で出現する敵を手元のガンコンを使って撃ち倒してゲームを進めていくというものだ。
今ゲーセンで動いているHOD筐体は25年モノであり、ありがたいことにGiGO秋葉原3号店で今もプレイ可能。
家庭用ではこれまでにPC版・セガサターン版が発売されている。
しかしPC版はWin98以前でないと動かず、互換モードでもまともに起動できない。
セガサターン版はグラフィックが劣悪で、「まるでモザイクが歩いてくるよう」と形容したプレイヤーもいたほど。
加えてガンコンでプレイするにはブラウン管テレビが必要である。
そんなわけで、初代HODを快適にプレイする方法が今は非常に限られている。
現状、HODのマジ初代をやろうと思ったら、違法ROM落としてエミュレーターで遊ぶか、セガサターン買ってきてモザイクみたいなソンビと戦うか、筐体をおいてある数少ない良心的なゲーセンを探すしか無いんだよな
— カルマ (@Karmactonics) 2022年4月7日
そんな中で、その初代HODがリメイクとはいえ家庭用コンソールで発売された事は非常に喜ばしいことだと思う。
筆者も発売日前に予約して、当日即インストールしてプレイした。
結論
ではHODリメイクは果たしてファンが満足する出来になっているのか。
…正直言えば満足する人は多くないのではと思う。
「ガンシューティングが好き」「ガンシューティングは初めてプレイする」「廃れつつあるジャンルがSwitchで出来るだけでも満足」という方なら問題ないと思う、というレベルである。
正確には、原作のプレイ感覚・難易度をリメイクに期待してしまうとガッカリしてしまうだろう、ということ。
レビュー
以下、良い点・悪い点をそれぞれまとめてみようと思う。
ただ研究員全員救助でアンロックできる武器庫などの要素はまだ遊べていないため触れることが出来ない。
もしかしたらこの要素によって見方が変わる点があるかもしれない。
また筆者は原作ファンのため、どうしても「原作と比較してどうか」という目線になってしまう。
これらの点はご留意いただきたい。
良い点
グラフィックの向上
本作のゲームエンジンはUnityである。
(ある意味当然ではあるが)グラフィックは現代の水準に合わせたものになっており、原作のおどろおどろしく不気味な雰囲気を忠実に再現している。
「壁紙の剥がれ落ちた廊下」「月明かりの差し込む食堂」などの雰囲気作りは抜群で、チャプター3の研究所あたりの表現は「今さっきまで研究員たちがそこにいた」と思わせるようなディティールになっている。
ただし、一部のエリアは再解釈がなされている。
例えばチャプター3の巨大溶鉱炉?のようなエリアだった場所は巨大な沼地のような表現になっている。
またチャプター1冒頭のキュリアン邸庭は全体的に照明がついているかのように真っ赤に染まっており、こういった点は賛否両論あるだろう。
ボスに関しても細かいモデリングがされていて、特にチャプター2のハングドマン・チャプター3のハーミットは秀逸。
ハングドマンは最新作「スカーレットドーン」を踏襲したような見た目になっていて、
ハーミットは口の触手や足関節の作りがより気持ち悪い方向に進化しており、原作ファンの筆者も大満足の出来だった。
ハーミット戦の難易度上昇
ハーミットは原作では画面の中心を撃ち続けるだけで簡単に倒せてしまうためあまり強いボスではなかった。
本作では移動や糸飛ばしのモーションが改善され、弱点や糸をしっかりエイムしないとダメージを受けるようになった。
ハングドマンやマジシャンに比べたらそれでも弱い方のボスではあるのだが、やりごたえという面では原作よりも向上している。
PHOTO MODE
プレイ中基本的にいつでもポーズでき、その状態でメニューからPHOTO MODEを開くことができる。
これによって、今表示している場面を自由にスクリーンショット撮影ができる。
普通にプレイしているとチュートリアルも何もないので、もしかするとこのモードに気づかないプレイヤーもいるかもしれない。
多少のカメラ移動やズームも出来、簡単ではあるがフィルター機能もあるため、
お気に入りの場所を見つけたら壁紙にしたり、カッコいいと思う場面を撮影してSNSに投稿したりも良いだろう。
新モード「HORDE」
アーケード版・セガサターン版・PC版のいずれにもなかった新モード「HORDEモード」が追加されている。
出現するソンビの量が通常の倍以上になっており、より緊迫した戦闘を味わえる。
昨今では「ゾンビが物陰からスッと襲ってくる不気味な恐怖」よりも「物量で押し寄せる恐怖」で魅せるゾンビゲーも数多くある(例:Days Gone、World War Zなど)。
このモードもそのような流行を取り入れた形だろう。
ギャラリーモード
ギャラリーモードでは獲得した実績を確認したり、出会ったゾンビをじっくり眺めることが可能だ。
各ゾンビにはそれぞれ細かい背景や弱点があり、それらを確認できるようになったのはかなり良い点である。
(原作ではゾンビの弱点は頭しかなかったため、そういった意味では普通にプレイする分だと説明不足とも言えるが)
また原作では名前のなかったゾンビにも名前がついており、これもゾンビの名前をすべて覚えているようなコアなファンには嬉しい点だろう。
個人的にはハングドマンのデザインがかなり好みで、翼で蓑隠れするハングドマンが見れるのはギャラリーモードだけなので必見。
悪い点
ゾンビ・ボスの動きの変更
以下箇条書きで記す。
- エビタンの水中飛びかかりが接触と同時にダメージを受けるようになった。
- 複数ゾンビが出てきた時、同時に攻撃される場合があり理不尽に難易度が上がった。チャプター3のムーディー・パーラー・ハリスが顕著。
- ムーディー・パーラーのスピードが原作より遅くなった。後述の耐久度の問題も相まって簡単に倒せてしまう。小さくてちょっと素早いくらいのゾンビに成り下がっている。
- バーナーが手にしているバーナーを降ろして向かってくるようになった。
- チャプター3のシャッター向こうにゾンビが5体固まっている場面で、ベントリーの持っているドラム缶をシャッターが閉まった状態でも撃ち落とすことが出来たが、今作ではそれが出来ない。
- ゾンビを倒した時、ゾンビ毎の決まったモーションで倒れていたのが全て物理演算任せになったので面白みがなくなった。ただしその分死体撃ちでスコアを稼げるようになった。
- チャリオットの武器振り回しモーションが削除。単純ににじり寄るのみになった。また、第三形態でダメージを与えた時ののけぞり距離が低下し、難易度が上昇。
- ハーミットの死体撃ちをしてもスコア加算されなくなった。
- チャプター4冒頭で謎の機械を停止させて謎のロック解除をするシーンがあるが、今作では逆に機械を起動してロック解除させている。
ゾンビ・ボスの動きではないが、演出面で気になったシーン。
マジシャンの悪化
HODのボスの中でも一際高い人気を誇るマジシャンだが、原作の良さがほぼ失われてしまっているように感じた。
- 全体的なスピード低下。なんとカメラが追えるほどのスピードに…。目で追えないほどのスピードで動くからこそ人外の生命体の貫禄があっただけに非常に残念。
- 火球飛ばし・突進殴り・全弾発射をランダムで行うようになった。(体力が残り僅かになると全弾発射固定になるのは変わらず)
全弾発射はもうすぐ死ぬマジシャンの最後のあがきという演出面で非常に重要な攻撃だったのだが、
体力が有り余っている状態でも全弾発射を行うため、こちらも筆者からすると違和感が残る。 - 上記の攻撃パターン変更に伴って、攻撃キャンセルに必要なダメージがごく僅かになった。
そのため、火球を撃ち落とすよりもマジシャンを撃ちまくったほうが倒せるという状態になってしまい、ラストバトルが実質ただの連射ゲーになってしまっている。 - 静止中もフラフラと動くようになり、腕を組んだままピタリと静止して急に攻撃に転じる特有の不気味さはなくなってしまった。
またポーズも微妙に異なり、悪い言い方で言えばだらしなく見える。
(人外の生命体に対してだらしないというのもどうかと思うが、逆に言えばそれだけの貫禄と不気味さが原作にはあった)
演出・カメラワークの悪さ
原作とカメラワークが異なる箇所が多々あり、要所要所でカメラが勝手にゾンビに追従するシーンが多い。
通常レールシューティングでは、カメラの位置は変わらずプレイヤーが画面内の敵をエイムすることで敵を倒すが、カメラが勝手に視点移動をするので非常にエイムがしづらい。
特に複数体同時にゾンビが現れるシーンで頻繁に発生する。
逆に考えればエイムを中心に置いておけばカメラが追従してくれるので撃つだけで良いということになるが、それはそれでいかがなものだろうか。
原作ではほぼ発生しなかったカメラワークなので改善されることを願う。
またハーミット戦前のムービーで「Drキュリアンが逃げる→追うために前へ乗り出す→上からハーミットが降りてきて後ずさる」というシーンがあるが、
この「追うために前へ乗り出す」といった部分がカットされているなど、演出面でも悪化している部分がある。
BGMのアレンジ
すべてのBGMがリメイクにあたってアレンジされているのだが、
チャプター1と3のBGM以外は、あまり元のBGMを踏襲されていない。
ボス戦に至っては全く別のBGMと考えて問題ないレベルである。
名曲と言われているマジシャン戦BGMもリズム以外はほぼ別の曲になっており、特徴的なメロディがすべてありきたりなギターリフになっているのは残念極まりない。
そもそも、デフォルトでは効果音が大きすぎてBGMがあまり聞こえないため、
原作と同じバランスで楽しみたい場合はオプションから設定し直す必要がある。
部位欠損の削除(日本版のみ)
日本で発売されているverのみ、部位欠損がオフになっている。
代わりに破壊された部位は黄緑色に変色するようになったが、元々のゾンビの肌が土気色なためこれが非常に分かりづらい。
特にチャプター1ボスのチャリオットの第三形態は、全身のどこを撃ってもいいが一度撃った部位は肉が剥がれ落ちそれ以降ダメージを与えられないという仕様である。
そのためとりわけ部位欠損は重要な情報であるため、これがわかりづらくなっているのは戦術面で大きなストレスとなる。
このゲームにはゾンビが振り上げた腕を撃ち落として攻撃を回避するというテクニックがあり、これにも影響を与える点であるため、
表現規制はしょうがないとしてももう少しわかりやすくなれば…と思う。
研究員の誤射要素の削除(日本版のみ)
おなじく日本版のみ、研究員の誤射ができないようになっている。
ゾンビに紛れて助けを求める研究員が出現し、これを誤射した場合は本来ペナルティとしてライフ-1となる。
そのため、誤射ができないのは易しくなったとも捉えられるが、
ゲーム中では「ゾンビかと思って撃ったら研究員だった!」という誤射を想定してデザインされた場面もあり、
そういった場面が完全に死んでしまっているのは残念でならない。
また、一般人を撃たないよう注意してエイムしなければならないという緊迫感にも繋がるので、
誤射の要素は残しておいてもらいたかったところである。
ちなみにチュートリアル映像で「研究員を撃たないよう気をつけよう」と表示されるのは変わらずで、この食い違いが悲しさに拍車をかける。
ゾンビ耐久力設定の雑さ
原作では耐久力の高かったゾンビが今作では数発で倒せてしまう。 難易度ノーマル基準で話すと、サムソンがヘッドショット一発で倒せてしまうほど。 ムーディーやパーラーといった小さくて耐久力の高い敵も数発で倒せてしまう。 一方で一発で倒せたはずのタランなどが二発必要だったりと原作と変わった設定になっているため、原作をやりこんでいるほど違和感が強いだろう。 ただしベントリーの倒しにくさなど相変わらずな部分もある。
ジャイロ操作の精度
Switchならではのエイム方法としてジャイロ操作が用意されているが、この精度がデフォルトだと非常に悪い。
下手したらアナログスティックのエイムの方が正しく狙えるレベルである。
こちらに関しては、KAZ*1氏が狙いやすいジャイロ設定を探してくれているので参考にするとよいだろう。(ありがとうございます!)
取り急ぎ、HODリメイクのジャイロ設定(自分の場合)
— KAZ (@KAZ_GunShooting) 2022年4月8日
X軸ジャイロ感度 0.7
Y軸ジャイロ感度 0.7
ジャイロスコープのデッドゾーン 0.1
自動リロード 有効(0.0s)
AIM ASSIST 高 pic.twitter.com/a4sjlj8bFx
筆者は上記設定で少なくともスコアが倍になる程度にはかなり改善した。
ただしこの設定をしても照準がどこかに吹っ飛んでいったり逆に反応しなくなったりといった事象は起こるので、適宜Yボタンで照準をリセットする必要がある。
エンディングの変更
原作のエンディングはプレイヤーキャラであるローガンもしくはGがこれまでの道のりを戻っていき最後にキュリアン邸を振り返ってENDとなるが、今作では各エリアのイメージ画スライドショーと簡略化されてしまっている。
最後のキュリアン邸を振り返るシーンはキャラクター目線になるが、比較するとこちらのほうが没入感が削がれるのは間違いないだろう。
BGMも壮大だったオーケストラ風の曲とはうってかわって悲しげなバラード調の曲になっている。
HORDEモードの敵配置・処理の雑さ
HORDEモードで大量のゾンビが襲ってきた時に「画面外から攻撃される」「遠くから高速ホバー移動して殴りかかってくる」といったあまりにも理不尽な事象が発生する。
現代に合わせたというよりただゾンビの量増やしたぜいぇーいくらいのノリに近く、細かい敵の操作の制御ができていないように見受けられた。
ソフィーが可愛くない
これは完全に好みの問題だが、ソフィーが良くも悪くもリアルになっていて正直愛着が湧きづらい。
洋ゲーあるあるをそのまんま持ってきた形だ。
あとがき
ここまで散々書いてきたが、筆者自身はこのリメイクを非常に楽しんでプレイしている事を付記しておきたい。
ただしそれは「原作のプレイフィールを完全に再現はしてくれないだろうな」と自ら期待値を大幅に下げていたからで、
「え!?あの名作がSwitchで蘇る!?」というノリで購入すると多分後悔するだろうなと思う。